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用語解説
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KCS(ナレッジ センター サービス)― ナレッジを活用したコンタクトセンター運営とは ―
KCS(ナレッジ センター サービス、Knowledge-Centered Service) は、コンタクトセンターやカスタマーサポートの現場で活用されるナレッジマネジメントの実践的なフレームワークです。アメリカのNPO団体「サービスイノベーションコンソーシアム」が10年をかけ実証実験を繰り返し完成させました。主な目的は、顧客から寄せられるさまざまな問い合わせや課題を、組織に蓄積された知見(ナレッジ)を用いて迅速かつ的確に解決すること。そのために、現場で得られる最新の対応方法やQ&Aをリアルタイムに記録・共有し、全担当者が活用・改善していくしくみを構築します。この記事ではKCSについて解説をしていきます。
なぜKCSが必要とされるのか?
現代の顧客対応は、多様化・複雑化する要求や頻繁なサービスのアップデートにより、従来の経験や勘に頼るだけでは対応しきれなくなっています。従来方法では、担当者ごとにノウハウが属人化し、答えの品質やサービス体験にばらつきが生じやすくなります。
KCSは「問い合わせ対応で得られる知見を、担当者だけに留めず組織全体で共有・活用する仕組み」を提供します。FAQを単に作成するだけでなく、日々行われるお問い合わせへの対応自体からナレッジをリアルタイムで生み出し、すぐに再利用・改善できる点が特徴です。こうしたプロセスにより、担当者間の情報格差を解消し、一貫性のある高品質なカスタマーサービスを実現します。
従来型ナレッジマネジメントとの違い
KCSと従来型ナレッジマネジメントの違いは、「運用プロセス」に重きが置かれているか否かです。従来型は、あらかじめ用意された社内FAQなどのナレッジから、必要な情報を必要なときに取り出して使う受動的な仕組みが中心で、またその更新頻度も現場によってまちまちでした。KCSは問い合わせや対応を通じてナレッジを即時に更新し、常に最新情報として活用する点が最大の特色です。 これにより現場での事例や注意するポイント、最新の顧客ニーズがオンタイムでナレッジに反映されやすくなる一方、ナレッジが定常的に役立つ汎用性の高いナレッジかどうかを、評価・改善し続ける必要があり、情報の更新作業を含めた多大な工数をどのような運用で解消していくかが課題となります。
KCSを導入する4つのメリット
作業効率化と工数削減
過去の問い合わせと回答ノウハウをすぐに参照・再利用できるため、重複対応や調査時間の短縮、新人教育の負荷軽減に直結。組織全体の工数削減にも大きく貢献します。
高品質かつ一貫性ある顧客対応
誰が担当しても蓄積ナレッジを参照できるので、回答の標準化・バラつき防止・信頼性向上につながります。これによりサービスブランドの一貫性を維持しやすくなります。
継続的改善サイクルの定着
KCSでは「ナレッジは作ったら終わりではなく、常に見直して更新し続ける」ことが前提です。修正点は見つかり次第担当者がブラッシュアップをするため、ナレッジの棚卸は必要ありません。常に最新のナレッジを活用する事で、問い合わせ内容や顧客ニーズ、製品仕様の変化に即応でき、担当者のスキルも自然と底上げされます。
セルフサービスの推進
蓄積ナレッジを公開することで、FAQやヘルプセンターによる顧客の自己解決を推進。サポート窓口への問い合わせ数削減と満足度向上を同時に実現します。
KCS導入の流れ
KCS導入には大きく5つのステップがあります。
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ナレッジの収集
現場の対応履歴や既存ドキュメント、マニュアル等、あらゆる知見を洗い出し、共通フォーマットで集めます。
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ナレッジの体系化・構造化
分類・タグ付け・階層化し、誰でも検索しやすいデータベースを作成します。
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ナレッジの活用・再利用
実際の問い合わせやセルフサービスでナレッジを使い、使われ方や使い勝手を評価。改善点をフィードバックします。
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ナレッジの継続的改善
担当者が随時投稿・修正できる運用と、客観的なレビュー・承認体制を組み込みます。
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組織全体での活用・効果測定
複数部門に広げ、利活用状況や成果指標を定期的に見直し、継続的アップデートと体制最適化を行います。
KCS定着のための課題と対策
現場の理解とモチベーション
KCS導入の意義や成果を数値で「見える化」し、組織全体で納得感を持って取り組むこと、また評価制度やインセンティブ設計によって担当者の参加意欲を引き出しましょう。
ナレッジの質担保
定期的なレビュー・フィードバック・品質管理フローを明確化し、誤答や古い情報の混在を防ぐことが重要です。
効果測定と全社浸透
問い合わせ削減率や対応時間短縮率、顧客満足度スコアなど、成果を見える形で全社共有し、現場と経営層が連携。継続投資を得るためにも不可欠です。
生成AI Co-Creation Lab. での取り組み
生成AI Co-Creation Lab.で提唱する、コンタクトセンター自動化ソリューション「Hybrid Operation Loop」では、KCS準拠のナレッジを自動に生成するプログラム、「Knowledge Generator(ナレッジ・ジェネレーター)」がプロセスに組み込まれています。
「Knowledge Generator」は通話録音データから、KCSに準拠した高精度なナレッジを自動生成する独自の技術です。これにより、これまで膨大な時間を要したKCS準拠のナレッジ整備を圧倒的に効率化し、短縮できます。
ベルシステム24ニュースリリース
まとめ
KCSは「現場知見を組織の財産」として活用し続ける、AI時代のカスタマーサクセス向上に欠かせない新しいスタンダードです。導入や定着には工数が必要ですが、企業の顧客接点部門の業務高度化・効率化、また企業全体でのAI活用の基盤作りとしても極めて有効です。ビジネス領域の拡大にもつながる新常識として、ぜひ積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
